このブログだけ見ていると、もう20年近くやっているせいか
なかなか重鎮な感じがしてくるのであるが
業務柄、役所へ出向くことが昨年から多い。
なので実際の私はごくごく弱っちい、小さい存在であることを改めて思い知る日々である。
アダルトビデオ業界というのは、実にもろい業種だ。
店舗も、問屋も、メーカーも、ダクションも、制作会社でも、男優はもちろん女優も
この業界にあるあらゆるセクションが
法律の都合
により簡単に吹き飛んでしまう。
実際は法律の怖さを知らない一番の人は”お客さん”だったりする。
”法律による規制や取りつぶし”の恐ろしさを身に染みてわかっている我々は
なかなかやりたいようにやれない。
ところがお客さんはモザイクが濃いだの薄い、女優がいい悪いをあっさりと言ってしまう。
たとえばダクションとメーカーの話の場で、
「女優の○○さんいまいちだったですよ」
とかいう話が出ると、
その○○が単体であった場合
「いやそもそも今その娘うちお宅に出すとか話してないですし」
と見る見るうちに目が三角になるマネージャーが普通。
渋谷のギャング系ダクションだともっと怖い目に合うかもしれない。
さらに最近のお客さんは交番に行って
「裏ビデオ買ったんですが面白くないんで返金させたいけどどうすればいいの」
なんていうレベルのことを平気で言う。
ツイッターでの炎上レベルはこれよりひどくて、
おまわりさんの目の前で婦警さんにいたずらして自慢するようなことが
行われているのでまだかわいいが。
ネットになって、人と人の間にある空気というものが意識しづらくなっているのかもしれないが
あまりに失礼な物言いをする素人さんをどう扱うかは難しい。
では業界はというと、そういう空気は敏感な人が多いのだが、
とんでもなくいい加減な人が結構いるので、これはこれで困る。
AV作りをビジネスとしてやるか、趣味としてやるか、使命感をもってやるか
この動機によってそれぞれのセクションの人の対応はさっぱり違う。
シャトルさんのようにビジネスとして割り切っていると、儲かるか儲からないかが尺度であり
法に触れない限りはやる。儲からない、規制が厳しくなってきたらあっさり辞める。
である。
ほとんどのAVメーカーで監督が外注の場合はこれにあたる。
ビジネスだから目標は業界ナンバーワンとか、大きな倉庫、多くの社員、きれいなオフィス
ベンツ、自社ビル、システム化、合理化、画期的、しらない横文字
といった修飾がついてくる。
趣味としてやる場合、多くフェチ物であるが、肝心の事務手続きがひどくいい加減であることが多い。
規制や薄けしで摘発されるのは多くこのセクションの人々だ。
簡単に作れて、単調なシリーズが販売実績にかかわらず非常に長く続いているのが特徴。
脚フェチ道part110とか。
風営法の届け出が出されてないか人任せ、ネットやITはわからない、
規制や法律がわからない、法人化もされていない
帳簿すらないとか。
自分のやりたいことだけに集中するから見たいものを見せようとするあまり、薄けしになったりする。
カメラをやって、ADがついてこれないとか、変なカメラを変な使い方するとか
AVが撮りたいのじゃなくてそのカメラで遊びたいだけでしょ、ということもある。
ある女優のファンでその女優となかよく過ごすのが目的というのもある。
使命感というのはなかなかない。
使命感とはなにか?
どうしても映像にしたいものがあり、その需要もあるけれど
どうもその具体的な映像が自分の頭の中にしかないらしい
誰も作ってくれないので自分で作ってしまえ。
いや自分でなんとかして作るしかもはやない。
というのがこれにあたるけど、業界でなにか見たりない、ということはそうそうなくなった。
特徴は、頭の中の映像を再現しようとする点だ。
カメラで遊ぶこともないし、女優を趣味半分で選ぶこともない。
できるかできないか、さらに売れない女優でも売れる女優でも
イメージに合う女優しか使わない。
イメージに合うと、売れなかった女優が大人気になったりしてしまう。
衣装やスタジオやシチュエーションが妙に具体的で、あっという間、または何時間もかけてだが、
カメラに収まってしまう。周りの人は「この人は何をやっているのか?」と
狐につままれたような顔をしている。
編集されて初めてわかる。
うちはもともとそうだったけど、最近は少しビジネスに振っていかないと、社員を養えないし新作も撮れない。
ビジネスになったり、ないものを作ろうとなったり、ウロウロしている。
MVGの松本さんがかつてそうだったし、多く監督やパフォーマーでマルチな人がこれにあたる。
敵と味方が異様に多かったり、極端だったりする傾向がある。
昔のAV監督はこのタイプが多かった。
不幸にして私はこれにあたる人は松本さんしか会ったことがない。
望月監督、村西監督、安達かおる監督、高槻明監督とか仕事をさせてもらった人々はいるが、
深く知らないので何とも言えない。
カメラマンだと田中欣一先生がそうだ。
共通点は、自分専用の作品を売れもしないのにライフワークでコツコツ作っていたりする点だ。
私もちんこじる娘コミック版をコツコツ盆栽しているが、田中先生のまねである。
高槻監督は村西監督のドキュメントを延々撮影している。
妙なカリスマ性がある人々だ。
おそらくほかにもおられるのだろうが、会ったことがないのでわからない。
巨匠監督が多いし、業界に友達いないので。
男優だと大きな声で言えないが、程嶋氏がそうだと思う。
彼の使命感は、かなり強い。
2005-2010の日本に中出しブームを浸透させた第一人者の一人かもしれない。
しかしながら
どんな偉大であっても成功者でも、巨大なビルを持とうとも
法律で簡単に消しとんでしまうのがこの業界なのだ。
だから偉そうに言っているようでもあまり気にしないでほしいが
あまりに空気読めない失言も勘弁してほしいということ。
とにかく前に進むので手いっぱいということが多い。
慎重な作業を集中してやっているときに、今日の晩御飯の話を聞かれるようなものなのだ。
それはともかく
役所に行くと、自分の小ささを本当に思い知る。
これは一般の方にはわからないかもしれない。
役所が応じてくれるか、お許しお目こぼしをいただけるので我々は撮影も販売もできるのである。
我々の業界には実のところ、主権も市民権も保護される権利も何もないのである。
だから一身独立、という傾向が強いのかもしれぬ。
しかしながらいくら勢いがあっても一身独立だけでは持たない時もある。
やはりある程度集まって、やっていくほうが強いのかもしれない。
離れ小島を買って、そこで裸の王国でもやっていきたいと思うときがあるが、
自衛、仲間内のルール、自給自足、共存共栄、
自分が王様になったとて、結局国のようにルールを作っていくので、
どこか強い国についていくことになり、それが日本政府なら
まったくもって離れ小島に自立するのは高くつく。
それが税金の本来の目的なのだろう。
この離れ小島に一身独立して多くの人間が住まい、外敵から身を守るのに
考えた結果、税金というものが生まれていると。
そう思うと、カリフォルニアの私有地で好き勝手しているマックスハードコアのおじさんが
うらやましいが、彼も何度もつかまって、ドメイン取りつぶしもされている。
カリフォルニアはゴム本が義務になったので窮屈らしい。
ハンガリーはアダルト天国だったが、シリア難民やISISの問題で
だんだん窮屈になりつつある。
かように思うのは、アダルトビデオというのは非常に脆弱で、デリケートな土台の上に
成り立っているのである。
業界の人間はそれを知っているから、つい厳しくなったりもする。
お客さんはこの業界の信号の色など何も知らないから、なんでも青信号だと思ってしまう。
制作現場が素人を嫌うのはこのためである。
ニヤニヤ「このビデオでたらほしいです。いつ発売ですか?」
知らねーよ、こっちは撮影終わしてお前ら帰らすので手いっぱいなんだよ。
である。
AVはいま、たまたま見ることができているだけ、という意識をもう少し持っていただけると
いいのじゃないか。
なんて言いながらイベントで女優さんが身近にくるよ~なんてことをやっていたりするので
おかしな業界なのである。
その割に店舗前の呼び込みは警察の指導があるからできない、スマホでの撮影はGPSがついているので
できない、などいろいろあるのはこういうわけです。